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テールライトの中の人生物語

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今の日本では、自動車で前方に割り込みをした時などには、ハザードを数回点滅させて、相手にお礼の合図を送っているが、そんな習慣があまり見られなかった時代。
今から数十年前アメリカでの光景です。日本人がお金に振り回されて、時を過ごしていた時代の話でもあるが。

真っ暗な空の下。夜明けにはまだまだ遠い時間帯のハイウェイでは、行き交う車もほとんど無い。サンフランシスコ発、ニューヨーク行きの長距離バスのドライバーと一台の大型コンボイのドライバーが、ヘッドライトとテールライトそれにウインカーで、光の会話をしていた。もちろん音の無い。ライトとライトを使った、心と心の、光の点滅に因る会話。このような意思疎通の方法もあるのかと驚くと共に、感心もした。きっと孤独と寂しさ、それにおそらく睡魔とも戦うためにも。まるで宇宙にでも居るのではないかと錯覚を覚える広く果てしなく継く草原のハイウェイの、漆黒の闇の中で。不安感の中の光は、心に届く言葉。己の存在を確認し逢っているようにも想われる。

大型バスをコンボイがユックリ、ユックリと追い抜いて行く。左側を。バスをコンボイの最後部が抜き終わるとバスが数秒、ヘッドライトを消す。その合図で、コンボイがオレンジ色のウインカーを点滅させながら追い越し車線より走行車線に入って来る。

“Thank You!!”

車ではなく、人間の動きのようにも見えてくる。車線変更が終わるとハザードで、2回ほどのウインクを送って来る。コンボイ野郎が。それで、この会話は終了と成る。

彼等にとっては、このような光景は日常の出来事。そしてそれは彼らの生活そのもの。彼等はそのように毎日を過ごしながら自国を旅し継けてきたのであろう。

そしてこれからも、人生という旅と共に時を駆けて往く。

2017.02.09.

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