ガレージR&キングバイヤー走行会「その日3人の若者たちは」

「主任、雨です」「うっっ」。余りのショックにその男は、30秒程そのままだったとか。
梅雨時のしとしと降る雨が、暗く薄汚れた窓を濡らしていた。望みを破く無情の雨。

主任君とは本日の「キングバイヤー&ガレージR走行会」の企画担当者。予定日の設定からサーキット場の予約、参加者の募集からイベント内容の計画決定まで全て一人で取り仕切ってきた。ドリフト走行に関してはこの男の右に立てる者はいない。でもこの男は日頃の行動がほとんど不明で、それ故におそらく余り良い行いはしていないだろうと周りには思われている。日頃の心がけの悪さからこの男の企画するイベントの日は雨となるという定説が在る。心がけの悪さが天気となって表れるとの周りの人達の認識でもある。前日の天気予報からは「どうにか空が持ちそうだ」との淡い希望を抱いていた。そしてそうゆう認識を覆そうと明るく話していたが、それが朝からの雨模様。天は彼にその素晴らしい愛を与えてはくれなかった

前日の夜には近くの簡易宿泊所で同僚の若者2人と合宿。気合の入れようは、半端なものではなかった。遠足に行く前の日の興奮した小学生さながら、なかなか寝付けなかったようだ。そんな彼はドリフト命。頭の中には、ドリフトの言葉以外は存在しないとも言われている。
もう一人面白い男が居る。時計、メガネ等の小物には興味があるらしいが、車屋なのに車のことは余り詳しくはない。出身は兵庫県で、今は都内のボロアパートで生活しているらしい。それなのに「都会の生活は、最高」と絶賛していた。でも将来にはビックな自動車屋を経営し大金を手にすると大きな夢を語っていた。頑張って欲しい。
他の一人は新人君。今日簡易宿泊所からサーキット場にデモカーを運転してきて、交差点でエンストを起こし大渋滞を巻き起こしたらしい。本人が恥ずかしそうに話していた。中古車販売店に就職する前は、自動車を運転する機会が無かったようだが
彼は何か人を引き付けるような若者のキャラクターを持っている。

その日の挨拶替わりの言葉は、日頃の行いの悪い連中の大集合に、天もびっくりしているから恐らく太陽は顔を覗かせないだろうとのことだった。でも受付が始まりドライバーズミーテングが終わり、コース走行が始まる9時頃には、雨も上がり、濡れていたコースは乾き始めた。走行はグリット初級・中級・上級とドリフト初級・中級・上級の6クラス、5ヒートで行われた。お昼休みの時間を挟んで16時には全ての予定を終了した。今回の参加台数は50台弱であった。次回は茂原サーキット場で9月に開催予定。

最終の走行まで、太陽は顔を覗かせてはくれなかったが、ドライバーそれぞれの心には太陽の輝き以上の楽しかった思い出としてこの一日が残ったことだろう。3人も含めた若者たちよ、存在するだけで輝ける時期は人生に措いて余りにも少ない。だからこそ美しく輝け。
今だけだよ。

2017.06.30