日本を代表するスポーツカーと言えば何を思い浮かべるだろうか。トヨタ2000GT、ハコスカ、R32スカイラインGT-R、RX-7など、きっと個人の好みや趣向によってさまざまな名前が挙がるだろう。
では、少し質問を変えて、「日本を代表するスーパーカーは?」としたらどうだろうか?
もちろん、21世紀に入ってから登場したモデルで言えば、R35GT-RやレクサスLFAなども候補になる。
しかし、それらの国産スーパーカーがまだ登場していない20世紀内で考えると、「国産スーパーカー」と呼べるモデルはほとんど無いと言って良い。
そんな国産初のスーパーカーと称され、誰も疑う余地のないのがホンダNSXである。
日本初のスーパーカー
1980年代半ばから、第2期となるF1参戦を開始したホンダは、ロータスやマクラーレン、ウイリアムズといった名門チームにエンジンを供給し、数々の栄光を手にすることになる。
そんな中F1で得たブランドイメージを最大限に活用し、「世界に通用するホンダの顔を持ちたい」という願いから、NSXの開発はスタートする。
世界一過酷と言われるニュルブルクリンクに開発拠点を設け、さらに、当時ホンダF1のドライバーであった、アイルトンセナや中嶋悟などが参加していた。
市販までにはかなりの苦労を要し完成した初代NSX(NA1型)は、市販車としては初の「オールアルミモノコックボディ」に、「NA3.0リッターVTEC C30A」を搭載。
さらに、工場ラインで工業用ロボットによる生産ではなく、人の手による生産がされるという点も、当時の国産車の中では特異な存在であった。
加えて、発売当初のグレードは1つで、販売価格は当時の国産車では最高値となる800万円(ATは860万円)であることも、国産唯一のスーパーカーと呼ばれる所以だろう。
極上のⅡ型Type S
今回取り上げた車両は、1997年2月にマイナーチェンジが行われた、Ⅱ型と言われるモデルで、その中でも、よりスポーツ性能を求めて通常グレードよりも45kgも軽量化されたType Sである。
Ⅱ型NSX最大の変更点は、MTモデルのエンジンが3.0Lから3.2Lに排気量がアップされたことと、従来のミッションケースサイズを変更すること無く6速NTが採用されたことだろう。
最高出力に変更は無いものの、最大トルクは1kgmアップし、5速までをクロスレシオ化、これまで2速にしか採用されていなかったダブルコーンシンクロを1、3、4速にも採用。
それ以外にも、前後16インチ化し容量がアップされたブレーキ、車高が10mm下げられ、チューニングが施されたサスペンションなど、よりNAスーパーカーの魅了を引き出す変更がなされている。
もちろん、ホンダのフラッグシップモデルとして、スペシャリティカーの要素もしっかりと取り入れられ、MOMO社製本革巻きステアリング、レカロ社製フルバケットシート、チタン削り出しシフトノブなどが採用される。
Type S専用のBBS社製鍛造アルミホイールは1台あたり4kg軽量化、メンテナンスリッドやサイドインテークには軽量メッシュグリルと、見た目と性能を兼ね備えた装備となっている。
Ⅱ型NSXには、さらにエアコンなどを取り除き、サーキット走行向けのType S zeroも存在するが、エアコンなどの快適装備を残したまま、よりスポーティに進化させたType Sは、当時としては、もっとも豪華で速い車と言っても良いだろう。