FCが渋すぎる
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2017年05月1日
突然の爆音。空気を引き裂くようにして最新鋭のジェット戦闘機が二機飛び立って行った。そして紺碧の西の空に突き刺さるようにして視界から消えた。ソニック音だけを残して。
滑走路の直ぐ横には、最新鋭とは言えない60年から90年代のオールドカー達が所狭と並んで居た。オールドな若者達の興味を引いて止まない往年の名車が3年程前に新築された綺麗な建物内に展示されている。若い頃には高価で手の出せなかった憧れの的が目の前に在る。目がキラリと輝く。今では生活にゆとりができ自分の物にすることが可能になった。
お店の経営者は大の旧車フリーク。米軍の立川基地の隣で小学生時代を過した。来る日も来る日も、フェンスのむこう側を行き来する外国車を眺めていた。それが外国車に興味を持ち始めたきっかけとなる。成人すると迷いなく外車屋に就職。自分の好きな外国車と共に過すために独立。そして旧車店をオープンする。今では、旧車仲間と連れ立って年に2回、春と秋にツーリングを楽しんでいる。その名もブレス的趣味車ツーリング。旧車を連ねての走行会は道往く人達の注目の的。
小学生時代の夢が実現した現在では、フェンスのこちら側に建てたお店に、自分のお気に入りのオールドカーを並べてある。オースチンヒーレー3000MKⅢとフィアット850スポルトスパイダーが並んで展示してあるショールームの横には、陸運局認証工場が併設されて居る。腕のいい、寡黙な、職人気質のメカニックが工場の隅から目を光らせて居る。
二階のショールームの片隅で、春の陽気に誘われてウトウトしていた1台のオールドファッションが、突然の爆音で現実に引き戻された。
戦闘機が飛び立つのを窓越しに見ながら囁いた、かも?
「おう若いの、そんなに急いで何処へ行く?君たちは必要に迫られて音の数倍の速さで飛ぶらしいが、空気感という物をその肌で感じたことはないだろう。俺たちは、そんな能力は端っから持ち合わせていないから、空気感を肌で感じ、そしてお腹一杯に美味しい空気も吸い込むんだよ。だからゆっくり行くんだよ。人生を楽しむためにもな。」
チャキッチャキの江戸弁が聞こえてきそうだ。
オシサマに呟きが届いたのか、南の空からの春の太陽の光が一段とその温かさを増したような一日だった。
2017.05.01.