焚き火やろうぜ!
アウトドア、とりわけキャンプに焚き火はつきものだ。暖もとれるし料理もできる。でも何といっても焚き火には不思議な魔力があり、それを取り囲む人々の心を和ませる。はぜる音、揺らめく炎、独特ないい香り…。焚き火をすれば、思わず飛び出す本音の数々。そこで知りたいのが、焚火の時の薪選び。なんだっていいわけじゃない。薪の種類によって焚き付け時間も違えば炎も変わる。もちろん匂いだって燃焼時間だって全然違う。ここから始まる大人の焚き火遊び、薪選び編。編集部員が実際に買って焚き火をしてみました!さあ、みんなで焚き火をもっと楽しもう!
薪を知れば魅力倍増
良い焚き火の決め手は適材適所の薪選び!
キャンプの醍醐味といえば焚き火!と答える人は多いはず。調理や暖をとるだけでなく、焚き火を眺めているだけで時間を忘れて夜が更けてしまう。
ところが火をつけるのに苦戦したり、煤だらけで周囲は真っ黒、なんて経験も多いはず。そこで覚えておきたいのが、薪の種類と特性だ。
一般的に薪として販売されている木はさまざまだが、大きく分けて針葉樹と広葉樹に区別できる。詳しくは下の説明を読んでもらうとして、大まかには素早く火がつき火力はあるがあっという間に燃えてしまう針葉樹と、火はつきにくいが着火すれば安定した火力を発揮し、火持ちもする広葉樹と認識してもらえればいいだろう。
火付けの際は細かく割った薪や、松などの樹皮部分など松脂が多い部分を最初に投入することで、火がつきやすくなる。また松の木の近くなら松ぼっくりも燃えやすいので着火剤として利用できるというのも覚えておこう。
その後は細く割った針葉樹を焼べて、火力が大きくなってきたら広葉樹を投入する。この順番を覚えておけば火付けで苦労することはないはずだ。
これ以外にも樹種によって特性があるので、代表的な薪に使用される樹種を購入し実際に燃やして特性を調べてみた。細かく特性を知れば、焚き火の魅力は倍増間違いなし!
薪は針葉樹と広葉樹に大きく分けられる
針葉樹
葉が針のように尖っている木。針葉樹の薪は油分や空気を含んでいるため勢いよく燃える。また安価なので、キャンプ場などで販売されている薪はほとんどが針葉樹となる。
メリット 安価 入手が容易 火付きが良い 燃えやすい
デメリット 火持ちが悪い 煙や煤が多い 匂いが強い
こんな使い方が最適
□ 焚き火をスタートする際の火付け用
□ 頻繁に火力をコントロールする飯盒炊爨のような調理
□ 薪を焚べること自体を楽しむ焚き火
広葉樹
葉の先が手のひらのように広がった木。密度が高く重いのが特徴。火がつきにくいぶん、一度火がつくと火持ちが良く、煙や匂いも少なめなので、調理にも最適。
メリット 火持ちが良い 煙が少ない 火力が安定する
デメリット 比較的高価 火付きが悪い 重い
こんな使い方が最適
□ キャンプファイヤーなど長時間火力が欲しい場合
□ ゆっくりと炎を眺めるような焚き火
□ 薪ストーブなど
針葉樹 / 代表的な針葉樹の薪
パチパチ音を楽しむなら
杉(スギ)
Japanese Cedar
日本では古くから植林されているため、比較的入手しやすく安価であるのが特徴。軽くて携行に便利。密度が低く薪割りしやすい。燃焼時間が短く、火力の安定が難しい。燃やすとパチパチ音が出る。火の粉が飛びやすい。また杉の良い香りがする。
密度 ★ ☆ ☆ ☆ ☆
コスパ ★ ★ ★ ★ ☆
火持ち ★ ☆ ☆ ☆ ☆
着火性 ★ ★ ★ ★ ☆
意外と匂いは感じない
檜(ヒノキ)
Cypress
高級木材なので、若干コストは高めとなるが、針葉樹の中では比較的火持ちが良い。乾燥が早く良く燃える。燃焼時の煙が少なく、燃えた後の灰が比較的少ない。また燃焼時にはそれほど匂いを感じなかった。
密度 ★ ☆ ☆ ☆ ☆
コスパ ★ ★ ★ ★ ☆
火持ち ★ ☆ ☆ ☆ ☆
着火性 ★ ★ ★ ★ ☆
煤や煙に要注意
松(マツ)
Pine Tree
スギ同様に比較的安価で入手も容易。スギやヒノキに比べて密度が高く、針葉樹の中では火持ちが良い。油分やヤニが多く、火力が強い。燃焼時にパチパチと爆ぜる音が発生し煤や煙が多い。松脂の固まった樹皮は着火剤としても使える。
密度 ★ ★ ☆ ☆ ☆
コスパ ★ ★ ★ ★ ☆
火持ち ★ ☆ ☆ ☆ ☆
着火性 ★ ★ ★ ★ ☆
広葉樹 / 代表的な広葉樹の薪
音、匂い、なかなかGOOD!
楢(ナラ)
Oak
広葉樹の中でも特に火持ちが良く、燃焼時間が長いのが特徴。着火しずらい反面ひとたび火がつけば薪を継ぎ足す頻度が下がり、ゆったりと焚き火を楽しむことができる。煙が少なく、燃やした際にパチパチと音がし、ほのかに漂う香りがする。
密度 ★ ★ ★ ★ ☆
コスパ ★ ★ ☆ ☆ ☆
火持ち ★ ★ ★ ★ ☆
着火性 ★ ★ ☆ ☆ ☆
硬いので薪割りは大変
椚(クヌギ)
Sawtooth Oak
樫と並ぶ高級薪の代名詞となっている椚。火持ちが良いのが特徴。燃えた後の灰が比較的少なく、後片付けが楽。かなり硬いため、薪割りが大変。樫に比べて着火性に優れている。樹皮がついている場合は剥がしたほうが良く燃える。
密度 ★ ★ ★ ★ ★
コスパ ★ ★ ★ ☆ ☆
火持ち ★ ★ ★ ★ ★
着火性 ★ ★ ☆ ☆ ☆
火が付けば一番の長持ち
樫(カシ)
Live Oak
薪の王様と呼ばれ、火持ちが非常に良い。密度が高く、一般的に入手できる薪の中では最も重い。太い薪に着火してしまえば長時間安定した火力を持続できるので、煮込み料理などの調理にも最適。また煙も少ない。
密度 ★ ★ ★ ★ ★
コスパ ★ ☆ ☆ ☆ ☆
火持ち ★ ★ ★ ★ ★
着火性 ★ ☆ ☆ ☆ ☆
音もいいし火持ちもいい
アカシア
Acasia
アカシアと表記されているが国内で伐採したニセアカシアの木がほとんど。本物のアカシアは輸入材が多い。特徴は似ているが、ニセアカシアは乾燥が不十分だと独特の匂いがする。樹皮が厚く、火に焼べるとパチパチと良い音がするが火の粉は少ない。
密度 ★ ★ ★ ☆ ☆
コスパ ★ ★ ★ ☆ ☆
火持ち ★ ★ ★ ★ ☆
着火性 ★ ★ ☆ ☆ ☆
そのほか試してみたい広葉樹の薪
桜(サクラ)
Cherry
バラ科の落葉高木。香りが良く燻製にも使われるため人気の薪のひとつ。着火性が低く、火力の安定が難しいが、煤も少なく、熾火にすると長時間安定した火力を得ることができる。価格は高めだが、調理の際には人気がある。
欅(ケヤキ)
Japanese Zalkova
燃焼時間が長く、熾火になった後も安定した火力を持続するため、ビザ釜などに使用するケースも多い。また燃えた後の灰がが少ないのも特徴。広葉樹の中では比較的着火性が優れている。青みがかった炎が上がる。
林檎(リンゴ)
Apple
乾燥しにくく着火性も悪いが火がついてしまえば燃焼力が強く、灰が多いため、灰に包まれた熾火が長持ちする。火の粉も少ない。燃えた際の香りが素晴らしく、ホワイトハウスでは来客の際にリンゴの薪を焼べてもてなすという。
楠(クス)
Camphor
広葉樹の中では密度が低く、薪が軽いのが特徴。成長が早く大気汚染や塩害に強いため街路樹として植えられている場所が多い。樟脳の原料として知られ、独特の香りがするため焚き火で使用すると虫除け効果があるそうだ。
榎(エノキ)
Chinese Hackberry
日本では生活に密着した木で、江戸時代には一里塚に植えられた。同じ広葉樹の樫と似ているが、榎のほうが密度は低く斧でも比較的割りやすい。燃焼時に青く美しい炎が特徴の榎。そのため観賞目的に焚き火の薪としても人気。
栗(クリ)
Japanese Chestnut
バラ科の落葉高木。香りが良く燻製にも使われるため人気の薪のひとつ。着火性が低く、火力の安定が難しいが、煤も少なく、熾火にすると長時間安定した火力を得ることができる。価格は高めだが、調理の際には人気がある。
Check it Out !!
魔法の粉で七色の炎を楽しめる
ネット通販で面白いものを発見。焚き火の最中に火中に投入することで炎が七色に変化するという「魔法の粉」なるアイテム。袋のまま炎に投入すると青や緑の炎を楽しむことができるのだ。花火などに使われている金属の炎色反応を応用したもので、30分ほど楽しめる。
火付けはティンダーウッドを賢く使え!
ティンダーウッドとは松脂をたっぷり含んだ松の木片のを使った天然の着火剤。ライターやマッチで簡単に着火でき、新聞紙や小枝と違って燃焼時間が長いので、太い薪に火をつけやすいのだ。
Text & Photo:Daisuke Katsumura
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