1オーナー!車庫保管!奇跡の1台
1981年に発売された6代目スカイラインとなるR30は、スカイラインの長い歴史の中で、通称ハコスカと呼ばれるC10型、16年ぶりにGT-Rが復活するきっかけとなったR32と並んで、重要な位置付けと言えるモデルである。
この記事で取り上げている1982年式スカイラインクーペ GT-ESターボ(HR30)は、そんなR30スカイラインの中でも、シングルカムのターボエンジンであるL20ETという伝統のL型エンジンを搭載する。
この車両の前オーナーは、新車で購入する際、直列4気筒4バルブDOHC FJ20E型エンジンを搭載する「2000RS(DR30)」と、どちらにしようか迷ったという程、直6ターボ、直4ツインカムという二つのスポーツエンジンが存在する珍しいモデルでもあるのだ。
R30スカイラインはのちに、FJ20E型エンジンにターボを装着した2000ターボRSが登場し、「史上最強のスカイライン」というキャッチコピーが用いられ、さらに、日産はそのターボRSでハコスカ以来となるワークスとしてレースに復帰をすることになる。
そのため、R30と言えば「2000ターボRS」という印象が強く残ることとなり、HR30型スカイラインは伝統のストレート6を持ちながらも、DR30の陰に隠れた希少な存在となってしまう。
しかし、スカイライン好きや旧車好きの間では、GT-ESターボの希少性に惚れ込んでいるファンも少なくない。
34年前の輝き
この記事で取り上げている車両は、ワンオーナーで尚且つ、新車から車庫保管を欠かしたことのないというのも驚きであるが、いくら大切に車庫保管していたとしても、80年代初頭の塗装技術では、34年以上の歳月による塗装の劣化避けられない。
しかし、そこはユーティリタスのボディーワークによって、エンジンルームとタイヤハウスを含むレストアを行い、まるで当時からそのままタイムスリップしてきたかのような輝きが復活した。
もちろん、ただ外装を塗り直しただけではなく、エンジンやクロスメンバー、足廻りなどを脱着した上で、純正色にオールペイントされている。そして、L20ETエンジンも純正部品を極力多用しながらオーバーホールし、見た目だけではなく、走りやサウンドまでも見事に蘇らせたのである。
サイドストライプなども見事に再生
エンジンなどの機械廻りは純正部品やリビルト部品を活用することで、見事に復活を果たしたものの、この車両の見た目の肝となる、サイドのストライプや「2000GT TURBO」などのデカール類は、当然新品など販売されているわけもなく、専門業者によりユーティリタスオリジナルのレプリカ品を作成したとのこと。
その出来栄えは、近くで見ても全く遜色がなく、純正品と寸分違わぬ出来栄えである。
また、この車両は、ここまで全くと言って良いほど改造をされず、オリジナルの状態を保っているというだけでも十分価値があるのだが、さらに注目して貰いたいのは、前オーナーがこだわって装着したという純正オプションの数々で、今では希少な絶版パーツも満載。
そして、純正オリジナル“AD Three”のフロントスポイラーなどもきっちり再生され、納車された当時のままのスタイルを維持している。
新たな歴史の始まり
6代目R30スカイラインが販売されていた時代は、いわゆる53年規制によって強化された排ガス規制を受け、多くのスポーツモデルは、エンジンパワーが落ち、苦戦を強いられた直後から、一気にラグジュアリーな車がモテはやされるバブル期までのちょうど狭間である。
言うなれば、日本の自動車メーカーにとっては大きな過渡期とも言える時代であり、納車当時の姿のまま蘇ったこの車両からは、ここから新たなスカイラインの歴史が始まっていくという、当時の熱をそのまま感じることができる。
【問い合わせ】:ユーティリタス
http://www.utilitas.co.jp/
TEXT:Shingo.M
PHOTOS:TUNERS