湾岸線に圧倒的なオーラを放つ2台の名車たち【Dream33×Anija】
首都高湾岸線、日も静まりかえり都内のビル群に明かりが灯るころ、某パーキングエリアで怪音を放つ2台の獣があらわれた。ゆっくり徐行しながら動くその2台はまるでこれからの走りを温存しているかのような圧倒的なオーラを放つ。1台は伝説のマシンとも謳われる「フェラーリF40」。そしてもう1台は当時怪物ともいわれた「ケーニッヒテスタロッサ」だ。まるでバブル期にタイムスリップしたかのように、同年代であるこの2台が揃うというのは稀代であろう。そしてなんでもない都会の平日である宵の刻、この2台が走るだけで色濃く時が流れた気がした。
1990y Ferrari F40
伝説の名車と謳われその立ち位置を不動のものとして知られる「F40」。車名の由来は1987年にフェラーリが創業40周年を記念して製作されたことは有名な話だ。
リアミッドシップに搭載されるV型8気筒ツインターボユニットはとてつもないパワーを発揮し、発売当時は最速で公称324km/hという最高速度であった。もちろん車輌スペックもさることながら、世界中のクルマ好きを熱狂させたのはそれだけではない。やはりそのデザイン性にもよるものだろう。デザイン担当はトップカーデザイナーであるピニンファリーナ。流線型を特徴とするスタイリングは今でも色褪せない。
足回りも現代化されたサラブレッド
ここに掲載された個体は92年の生産終了までの1311台中の1台であり、現役中の現役だ。ボディにも艶があり、インテリアも全く古さを感じさせない。それどころかバージョンアップで足回りはリフレッシュされている。ホイールは赤いボディに合わせたエンケイの18インチをインストール。車高調、ブレーキ回りはワンオフによるエンドレス製。エグソーストもワンオフでそのサウンドを聴けば誰もが胸が高まるに違いない。そしてパッと見では分からないこだわりはエンジンフードにあった。もともと高い剛性と軽量なボディに加え、熱を持ちやすいフードの裏側にNASAでも使用されている耐熱シートを施している。オーナーによる古き良きモノと現代に通ずるカスタマイズのチョイスにセンスを感じた名車なのだ。
1989y Testarossa koenigspecial
フェラーリテスタロッサといえば84年から92年まで販売された名車であるが、こちらは名車をさらにプレミア化するかの如くあの「ケーニッヒ」が手掛けた希少な一台だ。
「ケーニッヒスペシャル」とは1974年にウィリー・ケーニッヒによって創業されたチューニングメーカーであり、フェラーリをはじめポルシェなどのチューニングを施したメーカーである。またエクステリアやインテリアのドレスアップも有名で、日本ではバブル期に名を馳せたのが560ベンツのケーニッヒスペシャルだろう。とはいえケーニッヒの代名詞といえばやはりこのテスタロッサベースに違いない。ヘッドライトまわりは埋め込み固定式のヘッドライトに変更され、フロントにはバンパースポイラー、フェンダーも大きく張り出し、リアパネルの通称ブリスターフェンダーと呼ばれる巨大なエアインテークが特徴的だ。リアエンドにもダクトが設けられ、ボディーラインを崩さずケーニッヒならではの空力が考えられたデザインだ。
走らせてこそのスーパーカー
オーナーのN氏は今まで数多くのクルマに乗り継いできており、ここ近年はランボルギーニ党であったが、このケーニッヒデザインに見惚れて購入を決意。走らせてこそのスーパーカーの文字通り早速足回りから排気をカスタマイズ。
カスタマイズを施したのは新進気鋭のカスタムブランドショップ「Anija」である。ホイールはケーニッヒに相性がいいBBS製の18インチマグ、足回りはロベルタカップとアラゴスタ車高調の組み合わせ、ブレーキはブレンボ社製によるF50のものをインストールでより走ることが楽しくなった。またクライスジーク製のマフラーにより、高音域の甲高いサウンドも耳に心地良く残る。内装もレカロシート装着でしっかりと走り仕様に。現在もさらなる仕様を求めて「Anija」でモディファイ中とのことだ。圧倒的な存在感は時代を超えても変わらなかった。
希少な2台はまた湾岸線へと走り去り、あとにはエグゾーストノイズだけが頭に鳴り響いた。まるで幻が過ぎ去ったかのような錯覚に見舞われたが、間違いなく両車ともリアルに進化したネオレジェンドに違いない。
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